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有機大豆・有機にんにく生産者 三上新一さん農林水産祭天皇杯を受賞
キーワード野菜
回 答有機大豆、有機にんにくの生産者、青森県中泊町の三上新一さんが、10月15日に行なわれた農林水産祭中央審査委員会において、平成21年度農林水産祭の天皇杯を受賞しました。同賞は、過去1年間の農林水産祭参加行事において、農林水産大臣賞を受賞した514点の中から選ばれたもので、農林水産関係の選賞ではグランプリに該当するものです。おめでとうございます!
三上さんは今年6月の第58回全国農業コンクールで、農林水産大臣賞を受賞しています。

『農林水産祭天皇杯受賞理由概要』
○氏名又は名称 有限会社瑞宝(代表三上新一) ○所在地 青森県北津軽郡中泊町
○受賞理由
・地域の概要
中泊(なかどまり)町は、津軽半島のほぼ中央に位置し、南西部には岩木川が流れ、その河口付近の平野地帯は稲作などに適した肥沃な土壌である。平成18年の農業産出額は39億6千万円で、米が31億9千万円で全体の8割を占める。

・受賞者の取組の経過と経営の現況
昭和37年の就農より農薬や化学肥料を一切使わない「自然農法(有機栽培)」によるコメ作りに取り組み、その栽培技術について独自に技術の改善・向上に取り組んできた。当初は雑草が生い茂り収穫はほとんどできず、周囲からも異端視されてきたが、昭和60年以降、機械による除草作業が可能となり、安定的に収量を確保(県平均の約8割)するに至った。
平成5年の大冷害では、周囲が壊滅的な状況の中、平年作を維持したことから、メディアの取材や視察等一挙に注目を集め、これが自身の取組に対し確信を持つ契機となった。以降、有機栽培に賛同する仲間も増え、有機米の生産・販売を行う「中里町自然農法研究会」を組織し、地域農業の活性化に尽力している。
また、同研究会において大豆への集団転作(60ha)を行うとともに、平成13年以降、高齢化によって耕作されなくなった農地を集積し、地域の耕作放棄地の発生の抑制に尽力している。さらに、平成16年には(有)瑞宝を設立し、豆腐や味噌の加工とともににんにくの有機栽培も手がけている。
現在では、水稲23ha、大豆60ha、にんにく 2.5haの全面積において有機栽培を実施している。

・受賞者の特色
(1)有機栽培を通じた安定的な販路確保と企業的な農業経営の実践
有機米は同研究会を通じ「自然純米」の名前で、注文を受けてから共同所有するライスセンターで精米する「今ずり米」として販売している。主な販売先は、県内外の実需者・消費者で、環境にやさしい循環型農業に対する消費者の関心が高まっている昨今、需要に生産が追いつかない状況となっている。販路については、従前からの付合いがあり、農薬等を使わない有機米を求める都内の企業等へ販売しており、さらにそこから口コミにより販路が自然と広がっていった。
また、平成16年に(有)瑞宝を設立し、地域の人材を活用する雇用型の農業経営へと転換した。常勤雇用9人、非常勤雇用 910人と共に有機大豆の味噌や豆腐の加工、にんにく生産等に取り組み、経営の高度化を実現している。また、大豆、にんにくは全量契約栽培を行い、安定的な販路を確保している。
(2)土づくりや除草の機械化等の工夫により有機栽培における経営規模拡大を実現土づくりでは、研究会で堆肥センターを共同で設置し、籾殻、米ぬか等の副産物を有効活用した発酵堆肥を田畑へ還元するなど、より一層の品質向上を図っている。
雑草対策については、自身のほ場に合わせた除草機を独自に改良し、機械除草と手取り除草を組み合わせた除草体系を実践している。この機械除草の取組によって大面積での有機栽培を可能にした。

・普及性と今後の発展方向
三上氏が開発した技術は、機械除草を中心とした雑草防除、土づくり、有機栽培に適した堆肥作り等、一般の農家でも修得できる技術を総合化したものであり、多くの農家が取り組める普及可能性の高い技術である。このため、三上氏が展開している雇用型経営は、地域の人材を雇用して高い付加価値を実現する農業法人の一つのビジネスモデルを示しており、類似経営の今後の展開に大きな指針を与える経営である。

農水省プレスリリース『平成21年度(第48回)農林水産祭天皇杯等の選賞について』より http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/hodo/091015.ht

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