Organic Q&A
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衣類の防虫剤について
キーワード雑貨・衣類
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        衣替え〜衣類の防虫剤に気をつけよう

        ●パラジクロロベンゼンにご用心
        大切な衣類を虫から守るために、防虫剤を使う人も多いでしょう。ところが、防虫剤の代表的な成分の一つパラジクロロベンゼンは室内の空気を汚染する原因物質として挙げられています。厚生省の調査でも室内から高い濃度が検出されており、一般家庭でも汚染が広がっていることをうかがわせます。日本は欧米に比べて高温多湿で害虫が多く衣類の防虫に対する考えが強いのでしょうが、パラジクロロベンゼンの室内濃度は諸外国と比べて2〜3倍以上高いといわれています。
         家具や建材などに使われているホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの化学物質による室内の空気汚染が、住宅の中で目やのどが痛くなるシックハウス症候群やごく微量の化学物質に過度に反応する化学物質過敏症との関連で注目されていますが、衣類用防虫剤に使われるパラジクロロベンゼンもそうした原因物質の一つです。建材などに使われる化学物質と違って、防虫剤や消臭剤に含まれるパラジクロロベンゼンは、使用量を減らすことで濃度を下げることができるし、また使用を止めることでその危険性は避けられます。

        ●買う前に表示チェック
        市販の防虫剤には、ナフタリン、パラジクロロベンゼン、ピレスロイド系物質のものがあり、商品に物質名が表示されています。買う前に必ずチェックしてみましょう。

        ・代表的な衣類の殺虫剤は「ナフタリン」。直接手でさわると皮膚が赤く腫れたり、炎症を起こすこともあります。製造する過程で不純物として混入してくるベンツピレンは発ガン物質であるとされています。

        ・「パラゾール」(パラジクロルベンゼン)は頭痛、めまい、全身のだるさ、眼・鼻・のどの刺激、腎炎などがある有機塩素系殺虫剤です。また、
        白内障を起こすおそれもあると指摘されています。毒性が低いように思われ多用されていますが、潜在的な危険性が高い防虫剤といえるでしょう。
         トイレの防臭剤としてぶら下げるタイプのあの鼻をつく丸い玉やドーナツ型も、このパラジクロロベンゼンが使われています。トイレの空気汚染濃度は高いレベルで持続することになります。

        無臭だから恐いピレスロイド化合物
        無臭のエンペントリン(ピレスロイド化合物)を主成分とする防虫剤も、最近普及しています。ハンガータイプ、コーナータイプなど固形パック式や、シート、洋服カバーのビニールにつけているものもあります。無臭だから便利と思うより、無臭だから恐いと思ったほうがよさそうです。

        ●衣類の保存のために
        では、大切な衣類を虫から守るためにはどうしたらいいのでしょうか。基本は、衣類の汚れやシミなどをきちんと洗濯し落としておくことです。アイロンをかけてからしまうのも有効です。しかし、タンスや衣装箱の中の防虫剤の種類を急に変えたり、併用したりすると衣類が傷むことがあるといいます。ナフタリンやパラゾールを使用している人は、衣替えのときにすべての防虫剤を取り出し、衣類を虫干ししましょう。
         そして、防虫剤として使用する場合は、今のところ少量であれば樟脳がよさそうです。樟脳は、皆さんもよくご存知のクスノキの葉の匂いの成分です。昔から医薬に用いられていました。オランダ語はカンフル。文字どおり抽出液がカンフル剤とかカンフル注射として使われたこともありました。現在はのど飴、うがい薬、歯みがきや皮膚外用薬、また、セルロイドの原料として用いられています。
        そのほかに、虫の嫌うニオイをもつハーブ類をブレンドした防虫ポプリといった化学薬品の使用のないものを利用した保存方法も考えられます。
        いずれにしろ、長期に渡り、室内の空気汚染に結びつく防虫剤・消臭剤の使用はやめたほうが賢明でしょう。
         
        *パラジクロロベンゼン
        固体から液体にならずにすぐ気体に変わる昇華性がある。日本では衣類の防虫剤やトイレの消臭剤として広く使われている。有機塩素化合物で分解しにくいため環境や人体に長く残留する。動物実験でラットの鼻の粘膜に変化を起こすこと、またビーグル犬で肝臓やじん臓への影響が指摘されている。

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