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有機農業の原点に触れる … 有機農業・有機野菜って、なんでしょう

 

02.健康な土・健康な野菜(1)

  京都大学農学博士西村和雄
  根が生きているという意味
     
   

今年(2002年)の早春、じつに見事な大根を見た話から始めましょう。栃木の有機栽培の農家(ポラン広場の生産者)を訪ねたときに、出荷2週間くらい前という大根がありました。その大根がですね、なんと驚いたことに、肩のところに、双葉、発芽して最初に出てくる子葉、カイワレですね、その双葉がつやつやとした緑色をして、厚さが2ミリ、幅は5センチくらいはあったろうかというほどに、大きく成長して付いていたのです。

ふつう、本葉がざっと出てくれば、この双葉はたいがい黄色くなって枯れて、太くなった大根の肩にベチャッと張り付いているか、脱落して消えてしまうものだというのが常識です。ところが収穫の間際まで、大きく成長して付いていた、これは何を意味しているかというと、双葉につながっていた根がずっと生きていたということなのです。脱落するということは、途中でその根が死んだということです。

この双葉につながっている根は、どこにでているのかというと、発芽したときに、土の中をまっすぐ下に向かって伸びはじめる主根の横に、養分を吸収するための側根がでるのですが、その最初に出る側根が、双葉につながっている根です。こっちの葉はこの根、こっちの葉はこの根というように、それぞれ別の根につながっています。この最初にでた根が最後まで生きられたというのは、それだけ畑の土が健康だということになります。これが本当の意味での作物の育ち方であるし、土の在り方ではないかなと私は思います。

ここで、根のでかたについて少し解説しておきます。植物の根というのは、葉っぱと茎の下にわっとついているわけですが、その根のひとかたまりが地上部全部に栄養分をさっと送っているのではありません。大根の双葉のところでも書きましたが、この根は上ではこの葉につながっている、この根はまた別の葉に……というふうに、それぞれ根と地上部の葉とは、維管束という養分・水分のパイプを通じて、密接につながっているのです。

わたしが何年も作物を見つづけていて分かったことなのですが、ある根に障害が起きると、地上部ではその根とつながっている葉の葉脈が欠けたり、葉が対称的にならずに、部分的に縮んだりいじけたりするのです。根の一部が根きり虫にかじられたりしても同様におきることです。また、葉っぱが1枚ずつ生長していくと、その葉っぱにつながっている根が同じように生長していきます。もし肥料が偏っていると、その肥料の下の根だけが過剰に養分を吸収して、その根につながっている葉っぱだけが大きくなります。へたをすると葉っぱの片側だけが大きくなって、片側は全然生長しないという、往々にしてそういうことが起こりえるわけなのです。

   

 

  健康な土
     
   

土壌生物の種類も数も多い土

次に健康な土というのはいったい何なのだろう、ということです。まず土の健康を支えているのはいったい何なんだ、それは土の中のいろんな生物です。微生物、細菌、ミミズ、ダニ、トビムシとか、いろんな土壌生物、これらがトータルで種類も数も多いほど土は健康に育っているというふうに考えていいと思います。

有機農業では、土の中にいろんな有機物が入っていくように、堆肥を入れたり、緑肥作物を育てたりして、いろんな生物が、種類も数も増えていく方法をとるわけです。そういう健康な土にすれば、仮に土壌の中に病原菌がいたとしても、その病原菌が作物にとりついて被害を与えるほどには繁殖しないということです。いろんな種類の生物がたくさんいるということは、それが抑止力となって働くわけです。ちゃんと土ができてくれば、トマト、ナス、エンドウ豆など、連作障害がものすごくキツイといわれている作物でも、連作障害がでない、そういうことが起こりうるわけですね。こういう連作障害の起きないような、いろんな生き物が繁殖するような土になれば、作物はおのずとその肥沃な土壌で本当の育ち方をするということです。

いい匂いのする土

有機栽培の畑の土はものすごくいい匂いがします。土本来の匂いというのは、放線菌が出す匂いなのです。カビの匂いとはちょっと違います。この放線菌というのは土壌の微生物のなかでいちばん数が少ない微生物です。その微生物が匂うということは、他の微生物がたくさん棲んでいるという証拠なのです。

数年前、消費者の人たちと有機栽培の畑に行ったときのことです。農道をはさんで反対側の、キャベツとネギの専作をしている、化学肥料と農薬をバンバンかけている畑の土をちょっと失敬して匂いを嗅いでもらったんです。そしたら土の匂いがぜんぜんしない。土の匂いがしないということは、放線菌がいないということで、ほかの微生物の種類や数は推して知るべしということです。こんなふうに土の匂いひとつとってみてもこれだけ違うことがありえるわけです。

しかし、土の匂いはしなくても、その畑のキャベツやネギもちゃんと育っています。それはなぜかといったら、化学肥料と農薬に支えられて育っているわけです。そこの土は実質的にはもう死んでいるのです。土壌生物がほとんどいない状態。したがってそういう土がずっと続くことは、私はありえないだろうと思うわけです。そこで作物をつくろうと思えば、化学肥料をいっぱい入れて、農薬をかけないとやってられないとわたしは思います。

緩衝<かんしょう>能力の高い土

土が健康であるということは、緩衝能力が高いという意味でもあるのです。緩衝能力というのはショックを緩める力というふうに考えていいと思います。緩衝能力が高いとどういうことが起きるかということを、土の酸度、pH(ペーハー/7.0が中性)を例にあげて説明します。

ホウレンソウは酸性土壌では作れないとよくいわれます。それでも在来の日本ホウレンソウの方が、あとから入ってきた西洋ホウレンソウよりも酸性土壌には強いのです。ここに同じような土壌で、同じ5.5のpHの土が2種類あるとします。5.5は日本のホウレンソウが生育できるギリギリのpHです。ホウレンソウの種を蒔いたら、Aの土はやや生育が悪いものの、そのままずっと育ってちゃんと収穫できました。Bの方は本葉が2、3枚できたところで元気がなくなり、真っ黄々なって最後は枯れてしまったのです。

さて、おなじpHの土なのに、どうしてそんなに違いが出てしまったのでしょうか。これが緩衝能力の違いです。土壌の中の養分を作物が地上に吸い上げると、ホウレンソウだけでなく、どの作物でもそうなんですが、根の周りの土のpHが1ぐらい下がります。このとき、緩衝能力が高い土だと、下がったpHを即座に元に戻すだけの余力があるということです。体力があるといってもいいでしょう。そういう回復力のある、緩衝能力か高い土、それが私がいう健康な土なのです。そういう土ができれば同じpH5.5でもホウレンソウはちゃんと育つのです。緩衝能力のない土のホウレンソウは低いpHに耐えられなくて、根から腐っていくわけです。

土壌診断に行くと、「あんたんとこpH低いよ、石灰入れなさい。そうしないとホウレンソウ育ちませんよ」といわれるのがふつうですが、本当にその土が緩衝能力が高いかどうか判断はできないわけです。だから安易に石灰を入れて土の酸度を中和するのではなくて、私たちは健康な土にするような方法を取ればいいということです。

緩衝能力は、pHのような土の化学性にいえることですが、他にも生物的な意味合いでも使うことができます。生物的な意味での緩衝能力が高い土とは、連作障害を起きないか、おきにくい土です。また、土壌病原菌の抑制をする能力の高い土、こうした土壌のことを、抑止型土壌ということもありますが、要するに健康な土なのです。

     
  健康な野菜・おいしい野菜 〜 有機栽培と慣行栽培・その違いと見分け方(1)
     
   

それでは、健康な土に育つ健康な野菜・おいしい野菜というのは、どんな野菜をいうのか、いくつか例をあげてみましょう。

「刃応え」のある野菜は、煮るとやわらかい

有機栽培の野菜はですね、大根の場合ですと、切るときに堅くて、煮るとしっかり味がしみ込んで、口の中で溶けそうにやわらかくなるのです。これはなぜかというと、腹八分目の栄養素でしっかりと、着実に育ったからこそ、細胞のひとつひとつの構造がしっかりしているということなのです。それが「切るとき堅い」という表現、つまり「刃応え」になるわけです。

細胞の壁はセルロースとヘミセルロースという繊維質と、ペクチンという水に溶けてしまう糖分、この3つで構成されています。その細胞壁のセルロースとヘミセルロースというのは、建物でいうと鉄筋にあたるわけです。ペクチンはその間を埋めているコンクリート。鉄筋とコンクリートの配合比率がきちんと組み合わさっていれば、ものすごく細胞壁は堅いわけです。それを煮るとすぐにやわらかくなくなるというのは、ペクチンがサッとお湯に溶けるからです。だから火が通りやすい。

これが乱雑に鉄筋とコンクリートがですね、手抜き工事になったとすれば、鉄筋ばかりのところとか、あるいはコンクリートばかりのところなんかができるわけですね。そうすると切るときになんかスカスカなのに、煮るのに手間がかかって、あまりやわらなくならず、食べると筋ばって歯に引っかかったりするということになります。「刃応え」は、大根だけでなく、野菜全般についてもいえることです。

浸透圧が高い野菜は、甘みがある

(例)チンゲンサイの軸と大きさを比べてみる

2つのチンゲンサイの軸を見てみます。図体の割に軸が大きいのが有機栽培、図体の割に軸が小さいのが慣行栽培。なぜこれだけ軸の大きさが違うかというと、化学肥料というのは非常に吸収しやすい成分でできていますから、慣行栽培の方は根をそんなに発達させなくても、やすやすと土から吸収できるわけです。ところが有機栽培ですと、薄めの養分が土の中に散らばっていますから、それを吸収しようと思うと根をたくさん張らなければなりません。ちょっと難しい話になりますが、作物の根から地上部まで、全部含めて浸透圧(※1)を高くしないと薄い養分を吸い上げることができません。そこで浸透圧を高くするために作物はどうするかというと、体の中に糖分を溜めるわけです。それが甘味とかおいしさの1つの原因になっています。
(※1)浸透圧 …塩水や砂糖水のように、水に溶解する物質が溶けている濃度が高いほど、その方に向かって水が移動する力が強いことをいいます。ナメクジに塩をかけるとしぼんでしまうのは、ナメクジの体よりも塩の方が浸透圧が高いために、ナメクジの体から水分が出てきたからです。この原理で漬物ができるのです。

また、軸の小さい慣行栽培の方は別に浸透圧を高くしなくとも、わりとすんなり化学肥料を吸収できます。この浸透圧の違い、つまり糖分の違いがですね、こういう軸の大きさの差になって出てくるというわけです。そういうところで、本物の野菜と栄養過剰でぶくぶく太った野菜の違いが出てきます。一見、大きい慣行栽培の方がおいしそうに見えますが、栄養価は少ないのです。私たちの健康を維持するという食べものとしての役割があるのは有機栽培のチンゲンサイです。
(キャベツや白菜などの結球野菜は、有機栽培の方が小振りになります。この理由は次回で)

(例)玉ねぎの肩を押してみる

刻んだ玉ねぎを試しに食べてみます。1つは甘味が感じられて、もう1つはピリッと辛からかったとします。なぜこうも違うかというと、甘味の成分は糖がほとんどです。で、それは何かというと、先ほどの浸透圧です。

玉ねぎの見分け方のコツは、玉の真上の切り口の真横、この肩のところを押してみます。そうすると、すぐにカンとあたる、つまりぼこっと沈まない、ブカブカになっていない玉ねぎというのは、浸透圧が高くて、甘味の成分が多く、水分が飛びにくい、収穫してから水分が飛びにくいということは、それだけ日持ちがするということ、これが健康な玉ねぎです。こちらは体の栄養になります。

指でぼこっと入るのは、栄養過剰で野放図にブカブカに育っているということです。浸透
圧が低いから水分が抜けやすくて、したがって甘味も少ない。これは慣行栽培の玉ねぎに多い。窒素肥料が多すぎて、大きさは大きいけれど、あまり体の役にはたたない玉ねぎです。ここがぼこっとへこむものほど、切ったとき、断面に茶色くズルっと腐っているところがあったりします。

     
    月刊ポラン2003年1月号より転載
 
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010203

 
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