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有機農業の原点に触れる … 有機農業・有機野菜って、なんでしょう

 

03.健康な土・健康な野菜(2)

  京都大学農学博士西村和雄
  健康な野菜・おいしい野菜 〜 有機栽培と慣行栽培・その違いと見分け方(2)
     
   

葉の色が濃い方が良い野菜だと思ったら大間違い

2つのチンゲンサイの葉っぱの色を見比べてみます。葉っぱの色が薄いのと濃いものとがあります。これは何が違うかというと、葉っぱに含まれる窒素の量が違うんですね。どちらが本物かというと、実は葉っぱの色が薄い方です。皆さんは多分誤解していると思うのですが、葉色の濃いほうが葉緑素が多くて、栄養価も高い、良い野菜と思われがちなんですね。ところがそれは大きな間違いです。

土壌の中に肥料分の窒素がたくさん入って、作物が過剰に窒素を吸収すると、葉っぱの色はどんどん濃くなっていきます。この濃い緑色の野菜は茹でると色落ちしてしまいます。茹で汁の中に色がでてきます。それは葉緑素ではないのです。葉緑素の色というのは、本来はそんなに濃い緑色をしているわけでは決してないのです。葉緑素以外のいろんな色素が混ざって、濃い緑色になっているわけです。

色の薄い方は茹でたら緑色がもっと鮮やかになります。もっときれいになります。そして茹で汁のなかに色はあまりでてきません。ちゃんと育った理想的な野菜の色というのは、5月の新緑の色というふうに考えていただきたいと思います。あんなに薄い色でほんとうにいいのか、栄養が足りないんじゃないか、と思われる方が多いと思うのですが、はるかにこちらの方が栄養価は高いし、おいしいです。しっかり健康に野菜が育つということは、その中に含まれているビタミンとかいろいろな栄養成分がしっかり入っているということです。

本物の野菜というはの、葉っぱの色が薄くて、なおかつ艶があること。そうして、葉がしなっとせずにしっかりしていて、包丁で刻んでも「刃応え」があり、シャキッ、ザクッと、バッサリ切れます。葉の色が薄くても、艶がなく、しなっとしていて薄っぺらい腰の弱い野菜とはぜんぜん違いますよ。

それでは、なぜ作物は窒素を過剰に吸収すると不健康になるのでしょうか。少し難しい話になりますが、根から吸収した窒素をアミノ酸やタンパク質にするのに、余分なエネルギーをつかってしまうからなのです。せっかく葉を太陽に向けて、一生懸命に光合成(※1)をして太陽エネルギーを蓄えても、それを窒素の同化につかってしまうと、作物全体の維持に必要なエネルギーが不足してしまったり、肝心な養分、たとえばビタミン群などの合成もままなりません。収量を上げたり、大きくするために窒素をバンバンやった野菜は、図体がでかいだけで中身はあまり栄養がないということです。
(※1)光合成<こうごうせい> … 緑色植物がエネルギーを用いて、大気中から取り込んだ炭酸ガスを固定(有機物に転化)する過程をいう。そのときに水が消費され、固定された炭酸ガスとほぼ同量の酸素を大気中に排出する。

その点が有機栽培と慣行栽培の、つまり土が健康であるかないかの違いになってでてくるわけです。窒素の栄養素が腹八分目で育った有機栽培の野菜は小さくても中身の栄養価は確実にしっかりあるんだ、と思っていただいたらいいと思います。それが本当の育ち方なのです。

白菜の黒いポツポツは、窒素過剰の印

ところで白菜の白いところに、ポツポツと小さな一ミリにも満たない黒点が付いているのを見たことはありませんか。それは適正な窒素よりも多い、過剰な窒素が土壌に与えられて、白菜の中の窒素分が多くなったときに出てくる現象です。苦味やエグ味が出てきます。

本物の野菜は対称性があって見た目にも美しい … 葉っぱの形を見る

葉の付け根から葉の先のてっぺんまで通っている太い葉脈を主脈といいます。この主脈に沿って下から左右に次々と葉脈が均等に分かれていっているのが、正しい育ち方をした証拠で、主脈を折り目にして、左右を重ねてみると、左右対称形になるというのが作物の本来の姿なのです。

養分と水の通り道であるこの葉脈が、右・左・右・左と順になってでていればいいのですが、どれかが抜け落ちていて、右・右・左・右というふうになっていたり、クニャっと曲がっていたりすると、それはその葉が生長していくときに、根に何らかの障害が起こっていたことを意味します。また、葉っぱの左右どちらかが幅が広かったりするのは、養分のやり過ぎで、あるとき途中でぐっと生長したのではないかと思います。このように葉っぱを見ただけでも生育の仕方の履歴がわかるわけです。

本物の野菜は対称性があって見た目にも美しい … 葉序を見る

作物が育って、葉が一枚ずつ出てゆくときの角度と順序は、作物それぞれに固有のものがあって、ちゃんと決まっているのです。これを葉序といいます。対称性について、これを見るのがもうひとつのポイントです。

葉序を見るときのコツは、根の方を手前にして軸を見るのです。こうすると、どういう順序でどのくらいの角度で葉っぱがついているかというのがわかります。

キャベツだったら、葉っぱが5枚出て、6枚目でようやく最初の位置にくるわけです。それまでに2回転するのです。だから360度を2倍して、それを5で割ったら144度くらいになるのです。で、健康に育った正常なキャベツだと、葉と葉の角度がほぼ144度くらいで、葉が順番に展開していくわけです。そういう意味でしっかりちゃんと育った野菜というのは、必ず対称性があって、見た目にも美しいのです。

軸を手前にしてキャベツ葉序を見る

葉っぱを並べるときれいな放物線を描く

いちばん外側に付いている古い葉っぱから最後の小さな葉っぱまで順にバラバラに外して、それを葉柄の下端をそろえてから左から右へと一直線に並べてみます。するとだんだん葉の背丈が高くなってゆき、左側から3分の1くらいのところで葉っぱがいちばん大きくなって長くなり、その後はだんだん背丈が低くなってゆくはずです。この山のような輪郭を放物線といいますが、滑らかな放物線になるのが、理想的な作物の育ち方なのです。つまり健康で丈夫に育った命あふれる野菜の第一条件なのです。これは葉物類だけでなく、ダイコンやカブの葉にも当てはまることです。

さて、順に並べてもきれいな放物線を描かず、デコボコがある野菜は問題です。生育途中のある時期に過剰な養分が投与されると、その時だけ普通の生育速度よりも素早く生育することになり、その部分の葉だけが異常に大きく、背丈も高くなってしまうのです。異常に生長した部分が結局、二つ目の山になったり、山が一つであつても頂上付近が平坦になったりして、放物線が描けないのです。また根が傷つけられたりすると、その部分の葉だけが極端に短くなったりします。

並べてみるときれいな放物線を描く小松菜の葉

維管束<いかんそく>の大きさがそろっていてしかも等間隔に並んでいる … 結球野菜の軸と葉物の茎の断面を見る

キャベツや白菜などの結球野菜の軸と切断面をよく観察すると、緑に近いところに、黄色みを帯びた小さな丸が緑色に沿って並んで一周しているのが見えます。この丸は、維管束といいますが、光合成でできた糖分がエネルギー源として葉から根にむかって降りてゆき、根から吸収された養分と水は地上部にむかって移動してゆく、細かいチューブなのです。

維管束は、人間でいうと血管に相当する重要な器官ですから、しっかりと丈夫につくられていなければなりません。しっかりと健康に育った結球野菜では、維管束の大きさがそろっていて、しかも軸のふちに等間隔で均一にきれいな円周を描いています。もし、大きさがそろっていなかったり、等間隔で並んでいない場合は、まともに育った結球野菜とはいえません。

こういうことが個々の野菜について全部いえるわけです。葉物の場合はどこで見分けたらいいのかというと、根と茎の際を切ると、その断面に維管束が緑の点となって並んでいるのが見えるはずです。結球野菜同様に、その大きさが違っていたり、等間隔に並んでなかったりすれば、それはまともな育ち方をしていないということです。

小松菜の葉の断面 大根葉の断面
   
    ・ダイコンに「ス」が入っているかどうかを見分ける方法
ダイコンの葉の茎の切断面を見て、中ほどに小さな穴があいていたら、そのダイコンは間違いなく「ス」が入っています。小さい穴がなければ、ダイコンはしっかりと充実しているはずです。
   
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  前回の補足説明
     
   

キャベツや白菜などの結球野菜は、有機栽培の方が小振り

チンゲンサイや小松菜、ホウレン草などの葉物の場合は、有機栽培の方が軸が太いのですが、キャベツや白菜では有機栽培の方が軸が小振りになっています。これはなぜかというと、キャベツや白菜の根系はものすごく発達していて、半径1メートル以上、深さも80センチ以上に達します。有機栽培では特にその傾向が強いと思います。こうして根系が発達した結球野菜では、軸よりもキャベツや白菜でいう「葉柄」の部分、すなわちいちばん太い葉脈のところに、しっかりと養分を蓄えています。軸の太い化学肥料の結球野菜は、単に肥料分で肥大したにすぎないのです。
反対に、チンゲンサイや小松菜、ホウレン草では、発達すべき根系の量が限られており、しかも吸収した養分を蓄えるべき葉柄の発達が結球野菜ほどではありません。そのために、軸が太くなるのだと思います。私の畑でそのような現象が起こりました。

     
  なぜ、有機農業なのか
     
   

最後に、なぜ我々は有機農業をしなければならないのか、ということをちょっとだけ、これは私の考えですが、書いておきます。

太陽が宇宙空間に放射している光と熱エネルギーというのは膨大なものですけれども、地球に届いているのはそのうちのたった1億分の1です。その1億分の1の光と熱エネルギーが地上に降り注いでいる分だけが、我々が利用可能なエネルギーです。石油や石炭は別としてですよ。

その太陽の光と熱エネルギーを受けて、有機物を最初につくってくれるのは植物です。作物もですね。これらが光合成をして、酸素を出してくれなければ我々は生きていけません。我々だけじゃなくて、地球上の他の生物はすべて生きていけないのです。

その光合成が効率よくおこなわれるためには、土が健康で、その上に生える作物が健康であることが何よりも大切なのです。なぜかというと、作物が健康であれば、1枚の葉っぱでできる光合成の量は、不健康な作物とでは大きく違ってくるからです。

たとえば葉っぱが光合成をしようとおもったら気孔を開かなければなりません。そうすると水がどんどん飛びます。水がどんどん飛んだときに、根がしっかりと、飛んだ水に相当する分の水を土の中から吸い上げなければなりません。そのときに根にそれだけの活力がなければ、葉っぱは光合成できないか、水がなくなったら気孔を閉じてしまいます。そうすると光合成ができなくなるわけですね。

だからそういう活力のある作物が育つ条件を我々が整えられるかどうかなのです。そういう条件をつくるのは、化学肥料と農薬ではできない話です。健康な土を何よりも先につくって、その上に健康な作物ができることがまず大事なのです。たとえ量産できなかったとしても、それが我々の命を支えられるようなそういう作物であるべきだと私は思っています。

毎日かかさず口にする野菜が健康であればこそ、私たちの健康は保証されるのではないでしょうか。その健康な野菜は、化学肥料で過保護にすることなく、農薬を使うこともなく、太陽の恵みと雨と、そして何よりも豊かな命をはぐくむ土があってこその、有機農業でこそ、生産されるものだと、私は確信しています。

     
    月刊ポラン2003年3月号より転載
 
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010203

 
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