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ぐうたら百姓のすすめ … ぐうたらで生きた土をつくるには  その5
 

05土が育つまで

     
    有機物の分解は、種類によって違うのだということを前に説明しました。では、もうひとつ、慣行農業から有機農業へと切り替えたときに、すぐには土ができず、減収した例を説明しておきます。

ある農家の例

20年以上前になりますが、茨城県のある農家を訪ねたときのことです。その方は農薬の恐ろしさに慣行農業をやめて有機農業を決意されたのです。そうして、堆肥をつくり水田に毎年いれていったのです。有機農業初年目の収穫はまあまあでしたが、2年目には収量が落ちこみ、3年目には収量が半分近くまで落ちこんでしまったのです。

これはたいへんなことです。しかし、いったん決心したことをやめるわけにはゆかなかったので、我慢して続けたのです。もちろん堆肥は毎年投入されました。3年目以降には、収量はゆっくりでしたが回復し、切り替え後10年目にして慣行農業時代の収量の8割に達しました。そのあとは、天候によって多少の差はあるものの、およそ8割のまま安定した収量を得ることができました。

きちょうめんな方で、毎年ずっと記録をとり続けられたので、貴重なデータを教えていただくことができたのです。でも、切り替え後に収量が落ちこみ、10年ほどかけてやっと安定収量を得られるのでは、よほど余裕のある方でないとできません。

早くなんとか収量が回復しないものだろうか。落ちこみをなくすにはどうしたらいいのだろう。この課題はその後、私が有機農業を見続けているなかで、もっとも大きな課題のひとつでした。水田であろうと畑であろうと事情は変らないわけですから。

落ちこみと2割減収の原因

原因とその対策がやっとわかったのは10年くらい前でした。これは重要なことですからくわしく解説します。

有機物は、生に近い状態でも、たとえ堆肥になっていたとしても、すぐに年内に分解するものではないのです。また、堆肥というのは生の有機物よりも分解しにくいものです。有機物の種類によって分解するまでの時間が違うことは前に説明しました。ところで有機物の分解にはもうひとつ重要な要因がからんでいます。それは有機物にふくまれる炭素と窒素の比率です。有機物にふくまれる炭素の重さを窒素の重さで割って比をだしますと、およその分解のしやすさがわかるのです。この比を炭窒率<たんちつりつ>といいます。むつかしいし、話しにくいので、ふつうC/N比(シーエヌ比)といっています。ここではC/N比と書くことにしましょう。

鶏・豚・牛・馬・マメ・イネ

もっとも分解しにくい有機物は、おがくずやバーク(樹皮)でした。土の中に入れてから30年もたたないと、分解したおがくずやバークからは窒素がでてこないのです。おがくずやバークのC/N比はおよそ300。炭素300グラムに窒素はたったの1グラムしかないのです。これでは有機物を分解してくれる土壌生物が殖えるのに必要な窒素が絶対足りません。だからおがくずやバークは分解しにくいのだといえます。

堆肥は、原料が草だとC/N比35くらいにおちつきます。イネワラのC/N比はおよそ70、イネ科の牧草では40くらい、マメ科だと20くらいになります。鶏糞は8くらい、豚糞で9〜10、牛糞では12ほどになります。馬糞は牛糞よりもC/N比が大きくなります。鶏・豚・牛・馬・マメ・イネと覚えておくと役に立ちます。

鶏糞はもっとも多くの窒素をふくんでおり、よく効きます。効きすぎてこわいくらいです。

有機物は一度に分解しない

さきに例にだした茨城の農家の例で、なぜ切り替え数年後に収量が落ちこんだのか、これが10年たって慣行のほぼ8割に落ち着いたのかを説明します

有機物は、たとえその中にふくまれている窒素の量を化学肥料の窒素分と同じにしたとしても、有機物は全部がその年に分解するわけではありませんから、作物に必要な窒素分がどうしても不足するのです。ここでは有機物がその年に分解する量を25%とします。

ここで図を見てください

   
   


(1)切り替え初年度の有機物
75%は分解せずに土の中に残ったままです。切り替え初年度は化学肥料をやっていたときの地力がまだ残っていますから、それで何とかしのげるわけです。どう考えても、その年に分解する25%の有機物からでてくる窒素だけでは収量が確保できるわけではありません。

(2)切り替え2年目
2年目にも同じ量の堆肥を水田にいれたとします。そうすると、今年いれた有機物の25%からでてくる窒素と、1年前いれた有機物の残り75%から25%が分解してでてくる窒素の二つが加算されます。これでも足りません。また、化学肥料時代の地力は、この年にはほぼ底を突いてきますから、水稲の生育に必要な窒素分が絶対的に不足します。それで収量が落ちこんでしまうのです。

(3)切り替え3年目
3年目にもおなじ量の堆肥を水田にいれたとします。そうすると、今年いれた有機物の25%からでてくる窒素と、1年前いれた有機物の残り75%から25%が分解してでてくる窒素(有機物は56%残る)、2年前にいれた有機物の残り56%から25%が分解してでてくる窒素、の3つが加算されることになります。

(4)4年目以降
我慢して有機物を毎年いれてゆくと分解した残りの有機物はどんどんたまってゆくし、そこから次の年に分解する窒素が少しずつ増えてゆきます。こうして、いってみれば有機物の積み立て貯金を水田の中にしてゆくと、10年くらいたったときには、ちょうどその年にいれた有機物が全量分解したかのような窒素の量になるのです。

これで切り替え直後の収量激減の理由と、ゆっくりと収量が回復してくる理由がわかりました。それでも慣行時代の8割しかとれないのはなぜなのでしょう。

有機物を分解するのは生物

昔、田植えは梅雨の雨を待ってからしました。今は、苗代技術が発達しているので5月の連休前後に田植えができます。しかし、このころの水温・地温はそんなに上ってはいないのです。有機物を分解する生物のなかで微生物は10℃前後から、土壌動物はもう少し温度が高くないと活動できません。そのためせっかく水田にいれた有機物が分解しないままになっているのです。水稲は活着したらすぐに分げつ(茎がふえてゆくこと、それぞれに穂がつく)をはじめます。化学肥料だと吸収しやすいため、すぐに窒素を吸収して分げつをはじめられるのです。ところが、有機物をいれたほうは、まだ分げつに必要な窒素が有機物からはでてこないのです。まだ水も土も冷たいので、イネが必要とする窒素は不足するのです。こうして一次分げつがあまりできないうちに二次分げつ期をむかえます。このころになると水もぬるみ地温も上ってきますので、有機物を分解する生物が活躍しはじめます。二次分げつはまともにできたとしても最初の遅れは取り戻せません。

結果的に、窒素が不足したまま秋をむかえてしまうため穂の数すなわち有効茎数が足りなくなり、その分が収量に影響するのです。これが10年たっても慣行時代の8割しか収量が期待できない原因なのです。

遅れは取り戻せるか

遅れを取り戻すには堆肥のようにゆっくりとしか分解しない有機物以外に、はやく窒素を放出できるような有機物が必要となります。まだほとんどが未熟な状態の有機物でも窒素含量が高い、つまりC/N比が小さい有機物だと窒素が多いぶんだけ、たとえ温度が低くても、分解がそれなりに進み、作物にたいして有効に働くことができます。それがボカシ肥(*1)なのです。ボカシ肥の作り方については次回にしますので、それを参照してください。
(*1)有機物を発酵させたとき、発酵がすすむにつれてもとの有機物の形がしだいにわからないようになってきますが、ボカシ肥はごく初期で発酵を止めてしまいますので、発酵したのがわからないくらい有機物の原形をとどめています。そのことをボカシた、といっているようです。

有機物は使い分ける

地力として、長年かかって土のなかに貯金してゆく有機物。それは昔からつくっていた堆肥のような、ある意味ではあまり分解が進まない段階まで発酵しつくした有機物がいいのです。これとは別に、分解によってすぐに窒素が放出されるような、窒素分の高い有機物が必要になります。これがボカシ肥なのです。まとめておきますと、有機物は地力対策の有機物と、それだけでは足りない分の窒素を補給するための有機物とに分けられるので、このふたつを使い分けることが必要なのです。

10年ほど前にやっと、有機農業に切り替えた直後から慣行農業と遜色のない収量が上がるのだということがわかりました。実際、窒素が比較的多い有機物、たとえば家畜糞尿が十分確保できる有蓄複合経営の農家では、有機農業に切り替えてからの落ちこみが少なく、しかも収量の回復に10年も必要としないことが、その後の調査で明らかになりました。

これから新規に農業をはじめる方、有機農業にあえて踏み切ろうという方、ぜひ有機物の使い分けをしてください。


土つくり(育土)のまとめ - なによりも有機物
  
有機物は土つくり(育土)に欠かせない、重要な素材です。土つくりというよりも、育土というほうがただしいのですが、その理由は有機物が土壌生物のエネルギー源だからです。

土を育てるために有機物を土のなかへ補給する方法として、もっとも手軽なのは牧草を利用することです。これは前にも書きましたが、牧草でなくとも、日本の野草も有機物を補給するという意味では、決してわるいものではありません。そこで野草のうまい使い方、どんな野草が利用できるのかをまとめてみました。
 
日本の野草  草生栽培に利用できる草(1)
 
なんといってもレンゲでしょう。レンゲのほかにマメ科ではカラスノエンドウがあります。クズも場合によっては使えないこともありませんが、後始末に困るのでとりあえずはやめておきましょう。レンゲ、カラスノエンドウは根に根粒菌がついて窒素固定(*1)をしてくれるので、緑肥作物としておおいに使うべきでしょう。これを草生栽培として畑作物に組み込めば面白いことができます。
(*1)窒素固定…生物が空気中の遊離窒素を体内に取り込み、アンモニアまたはその誘導体であるアミノ酸(たんぱく質)などに還元する現象。その作用を営むのが窒素固定菌という土壌中の細菌で、単独窒素固定細菌と、マメ科植物につく根粒菌などの共生窒素固定細菌がある。

イネ科の草も使えないことはありません。たとえばススキです。腐りにくいようで案外と腐りやすいものです。刈ったススキは畝間に敷いておくとよいでしょう。畝間を歩くたびに踏みつけるので、案外と土に早くなじみ分解します。ススキは刈る時期に注意がいります。お盆前に刈ってはいけません。なぜならお盆までに貯えたエネルギーが翌年の分として根に貯蔵されるのです。したがって刈るのはお盆を過ぎてからにしましょう。 

他の草はどうでしょう。春草・夏草など、いろんな草が生えてきます。こうした草をうまく使うコツは種を畑に持ちこまないことです。たとえそれが未熟であっても、発芽能力を持っていますから、かならず種をつける前に刈り取って畑に持ちこみます。もしも種をつけているようであれば、水をかけて積み上げ完熟堆肥にしましょう。高温発酵をさせて種を殺してしまうのです。そのかわり堆肥にするのに最低1年はかかってしまいますが。

草といってもあなどれるものではありません。なぜなら草は土の肥沃度をただしく示してくれる、いってみれば指標植物なのです。酸性土壌なら、まず生えてくるのはスギナです。スギナが生えているのは土が酸性で養分が少ないことを意味しています。それからギシギシです。こうした草が生えることによって土壌中の少ない養分を吸収し、有機物とともに地表に集めてくれるのです。土が肥沃になってくるとスギナ・ギシギシなどは姿を消してゆきます。もっと肥沃な土に生える草にバトンタッチするのです。やがて土壌生物が多くなり、土はどんどんと肥沃になってゆきます。

河川敷きの堤防を見てください。いつも草が刈られています。なぜ草を刈らねばならないのでしょうか。その理由は、草を刈らないと土が肥沃になって膨軟になり、大水の時に崩れやすくなるからです。したがって堤防の草はせっせと刈り取って、土をやせたままにしておかなくてはならないのです。同じことが畦にもいえるのです。畦の草をこまめに刈ってやらないと畦がやわらかくなり、水田の水持ちが悪くなってしまいます。水が漏れてしまうと水田になりません。畦の土は固くしまっていないとだめなのです。

     
 
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