○作り方
手に入った材料を目分量で混ぜ合わせます。いい加減で結構ですが、水分含量に注意して、パラパラする程度になるなら、あとは思い切って混ぜましょう。ここに発酵菌を混ぜてやります。発酵菌だけは均一に混ぜなければいけないので、混ぜ方をいっておきます。
(1)発酵菌剤が乾燥粉末の場合には
まず、乾燥粉末の発酵菌剤と、その10倍くらいの乾燥した発酵材料の有機物を混ぜ合せます。一度に有機物と混ぜるとうまく混ざりません。つまり薄めてやるわけです。
それを大量(10倍くらい)の有機物に加えて混ぜ合せ、仕込むのです。発酵菌が手に入りにくければ、肥沃で作物がよくできる、生きた作土を混ぜてもよいでしょう。これは土こうじともいっています。土着菌を活用する方法です。
(2)発酵菌剤が液体の場合には
液体を水で100倍か200倍ほどに薄めます。これを手押しポンプのついた噴霧器や動力噴霧器に入れて、ボカシ材料に噴霧し、全体に発酵菌を混ぜるのです。
噴霧器を使う理由は、薄めた液にウヨウヨいる微生物をボカシ材料へ均一にかけてやるためです。注意したように、水が多いとうまくいきませんから、こんな程度の散布でいいのかな、と思う程度で結構です。ほんのお湿りでよいのです。
○仕込みは?
仕込みは雨の当たらないところ、直射日光があってもかまいません。土嚢袋に詰めるかブルーシートに広げるかしてください。土嚢袋に詰めた場合は隙間を少しあけて並べるとよいでしょう。シートに広げるなら、厚みは工夫が必要です。夏なら50センチまで、気温が低ければ厚めに積んでください。発酵温度は熱めの風呂を目安に、アチチと感じる程度が限界です。
切り返しは、気になればしましょう。めんどうくさい方は切り返しをしなくても結構です。ボカシ肥のでき上る目安は、夏場なら10日前後、春秋なら2週間、冬なら1ヶ月です。「発酵の終点がわからない」と、よく質問されますので、目安をいっておきます。発酵は何回もおこります。発酵が終って次の発酵がはじまる前に少し温度が下がります。発酵は、こうして何回も温度が上がったり下がったりするのですが、最初の発酵温度が下がったときで、ボカシ肥の仕込みは完成です。それもわからなくて面倒だという方は、さきほど書いた期間を目安にすれば、それで結構です。むつかしい発酵の条件などはまったくいりません。
発酵を止めるには乾燥させればよいのです。そのままで1年は使えます。土嚢袋の長所は袋が通気性なので、発酵しながら熱で勝手に乾燥するのです。
こうしてでき上がったボカシ肥は、もとの材料のかたちそのままです。ただ固まっていたり、白いカビが生えていたりしているだけです。においは臭くなく、甘酸っぱい良いにおいがします。糠床のにおいに似ています。固まっていて、畑にまくのに使いづらいなら、ボカシ材料を混ぜ合せるときに籾がらを全体の2割ほど混ぜておけば、バサバサになります。
○ボカシ肥の使い方と注意すること
こうして作ったボカシ肥は即効性で窒素含量も高いため、少量でもすぐに肥効があらわれますから、追肥として使うのが正しい遣い方だと思っています。追肥は土の上に播いたボカシ肥がどこに行ったのかわからない程度の播きかたが、追肥1回の適量だと考えてもよいくらいです。その程度でじゅうぶんなのですが、不安になってついついやりすぎてしまうのです。ボカシ肥はこまめに少しずつまいてゆくのがコツなのです。
即効性だといいましたが、ほんとうに早く肥効があらわれます。たとえば夏場だと、ボカシ肥を施用してから数日以内に肥効が出はじめ、気温・地温によってちがってきますが、夏だと2週間くらい、春・秋だと3週間ほどで6割くらいの窒素を放出します。この窒素分はすみやかに作物が吸収利用できる窒素になります。だから、今まで使っていた完熟堆肥と同じように思って、ボカシ肥を使ったりすると、とんでもない窒素過剰の作物になってしまうので、気をつけなければなりません。次のボカシ施肥をいつにするかは、作物の葉色しだいできめてください。葉色は、新緑の季節、木々の葉が鮮やかな緑になったのを常に思い起こしてください。これが健康な葉の目安です。
ボカシ肥にふくまれている残り4割の窒素は、分解しにくい有機物になっているので、ゆっくりと分解しながら窒素を放出します。したがってボカシ肥の窒素が全部出てしまうまで数ヶ月から半年の期間が必要です。
完熟堆肥とボカシ肥の大きな違いは、土に入れたときの分解に必要な時間が全く違っていること、そのために窒素の放出される速度が違ってくるのです。完熟堆肥は最初から最後まで、ボカシ肥の残りがゆっくり分解しているのと全くおなじだと考えてよいでしょう。元肥に入れるなら、1作に必要な量の半分以下にしてください。できるなら、全層に混ぜるのでなく、畝の上部3分の1くらいに混ぜた方が効果は高くなります。
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