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フクシマ原子力震災によって生活に深刻な支障が生じ、長期にわたる放射線障害のリスクが懸念されています。そのリスクは識者の間でも意見が分かれていますが、疫学(※)では決してこの問題に決着は付かないということははっきりしています。ある線量以上の放射線では吐き気、下痢、白血球減少、脱毛などのリスクがあり、それ以下では症状が現れない、ある線量以上の放射線ではガンとの相関性がみられ、それ以下では自然発生のガンなのか放射線の影響なのか分からない。分からないことには予防の原則で身を守りましょう
(※疫学:人間集団の中で起こる健康に関連する様々な問題の頻度と分布、影響を与える要因を調査し、有効な対策に役立てようとする学問
〔食品安全委員会『食品の安全性に関する用語集』より〕) |
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放射線から身を守るためには、以下の事柄が大切です
(1) 放射性物質を出来るだけ体内に摂り込まない
(2) 放射性物質の体外への排出を促す
(3) 放射線障害を軽減すること
ここでは (2)、(3)について考えます |
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放射線は細胞内の水と反応して「ヒドロキシラジカル」という活性酸素を発生させます(※)
(※活性酸素の発生には、放射線だけでなく、紫外線、排気ガスなど他の多くの要因があると言われています)
活性酸素は、細胞の遺伝子や染色体を傷つけ、がんをはじめとする様々な病気を発症する原因になります
この活性酸素に対して、私たちの体には抗酸化酵素をつくり活性酸素を消去する防御機構が存在しています。放射線防御のためにも重要な働きをすると考えられます
抗酸化物質は、食品に含まれます。ビタミン類・ミネラル類・ファイトケミカルと呼ばれる植物栄養素で、主に野菜・果物・穀物等の植物性食品に含まれます。これらの抗酸化物質のほとんどは、体内で合成できません。体内でつくられる抗酸化酵素と食品の抗酸化物質を摂取することによって、活性酸素の害から身を守っています |
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体内に入った放射性物質から身を守るための基本は、ビタミン類・ミネラル類・ファイトケミカル等の「抗酸化物質がたくさん摂れる食事」をすることです
そのための食として、低精白の米穀類を主食とし、大豆等の豆類、季節の有機野菜(※)や果物、海藻や乾物を豊富に摂り、動物性蛋白は良質なものを少々という、有機食品・自然食品・伝統製法の発酵食品による伝統的な日本食が有効だと考えています
(※有機野菜の基礎知識や栄養については「美味しさを比べてみよう」に紹介しています)
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活性酸素を抑える抗酸化物質 |
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抗酸化物質にはビタミンA・C・E等のビタミン類や、亜鉛・カリウム等のミネラル類、ポリフェノール・ベータカロチン等のファイトケミカル(植物栄養素)があります
ファイトケミカルは、抗酸化性、抗がん性、抗菌性、抗ウィルス性等の重要な役割を複合的に持っている事が明らかになっています。ファイトケミカルの多くは、野菜・果物の色素や辛味成分です
野菜や果物が、がんの予防や改善、放射線障害からの防御等に効果を発揮するのは、豊富に含まれるビタミン、ミネラルとファイトケミカルが協同して働くからだとされています
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有害物質を体外に排出させるミネラル |
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ミネラルには体にとって有用なものと有害なものがあります。有用ミネラル(必須ミネラル)にはカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・カリウム・亜鉛・クロム・マンガン・鉄等があり、鉛・カドミウム・水銀等の有害ミネラルを排出し吸収を妨げる働きがあります。こうした働きから、有用ミネラルには、放射性物質の排出を促す働きがあると考えられています
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玄米に抗酸化力・免疫力を高め有害物質を体外へ排出する成分 |
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玄米に含まれる栄養素のうち、フィチン酸とイノシトールという成分は、抗酸化力と免疫力を高める働きがあり、放射線による発がんを防止する効果が期待できます。また、フィチン酸は有害金属と結びついて体外へ排出する働きがあり、放射性物質を排出する働きも期待されます。玄米の他に、発芽玄米や胚芽米、古代米と呼ばれる赤米・黒米等、雑穀を組み合わせる事も考えられます
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味噌の放射線防御効果 |
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大豆は栄養が豊富ですが、発酵という微生物の働きが加わることによって、栄養分は消化吸収しやすい組成に分解され、栄養価も更に高まります。2001年の広島大学放射線生物学・医学研究所の研究報告で、味噌には活性酸素を消去し、放射性物質の排出を促す働きがあり、長期発酵熟成味噌の方が短期発酵の味噌より、放射線防御効果が高い事が判りました
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抗酸化物質が豊富な野菜と果物 |
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人参 抗酸化物質のベータカロテンが豊富です |
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りんご 果物でカリウムが最も多く、ナトリウム等を排出し放射線障害を防ぐ働きがあります。ポリフェノール類とペクチンが豊富で、がん予防に効果が期待されます
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キャベツ 抗がん作用があるイソチオアネートやペルオキシターゼという成分が含まれ、ビタミンCも豊富です
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ほうれん草・小松菜 本来ビタミンC等の栄養価の高い野菜ですが、慣行栽培では40年前の3分の1まで劣化しています(詳しい比較・数値は前出のウェブサイトをご参照ください)
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放射線障害からの防御に効果が期待される食品由来の成分 |
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ラクトフェリン 牛乳・乳製品等に含まれる成分で、2006年11月に(独)放射線医学総合研究所が「マウスを用いた実験で放射線防御効果が確認された。放射線被曝後に投与した場合にも有効な効果を示した」と報道発表をしました
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ビール成分 放射線医学総合研究所と東京理科大学の共同研究チームで「ビールのアルコール成分と溶け込んでいる麦芽の甘味成分等に放射線防御効果があり、放射線によって生じる染色体異常を最大で34%減少させる効果がある」ことを明らかにしました
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梅エキス抽出物 抽出物に多く含まれる「天然トリテルペノイド」成分に、細胞の防御力・免疫力を保護し、細胞内で抗酸化作用を発揮する蛋白質の合成を活発にする等、細胞が本来持っている防御力を内側から高めて、活性酸素の細胞障害作用を抑制する効果が期待されています
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フコダイン 昆布・わかめ・モズクなどの海藻に含まれるヌルヌル成分です。ストロンチウム90(炉心溶融で漏出する放射性物質)と結合し排出する作用があることが突き止められています。免疫活性作用があることも判っています
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ベータカロチン 野菜や果物、海藻等に含まれる黄色い色素で抗酸化作用があることで有名です。チェルノブイリ原発事故の際に、海藻のままチェルノブイリの子どもたちに与え、造血機能の維持に効果があったと報告されています。放射線の小腸へのダメージ回復にも有効であったとも言われています
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グルタチオン 強力な抗酸化物質で、放射線防御作用を発揮します。様々な有害物質を細胞外に排出する解毒剤でもあります。食物では、赤唐辛子・にんにく・玉ねぎ・キャベツ・スプラウト・米胚芽・小麦胚芽・ビール酵母・ほうれん草等に多く含まれています
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タンニン 茶葉から抽出されるポリフェノールであるタンニンは、放射線被曝による体内脂質の酸化を抑えるとの報告があります
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ペクチン チェルノブイリ原発事故で被曝した子どもたち、汚染地域の住民が、アップルペクチンを含む食品の摂食で、蓄積されたセシウム137の効果的な排出が促進されたという報告があります。りんご、柑橘類に多く含まれます
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クロロフィル 放射線障害の予防に効果があるという報告があります。基本的にすべての野菜・果物に含まれ、キャベツ・緑色の葉物野菜・緑茶に多く含まれます
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イソフラボン 大豆に含まれる成分で放射性物質による細胞膜の障害(活性酸素による過酸化脂質の生成)を防ぐ働きがあります。大豆には他に、造血機能の強化作用や、正常細胞を活性化し放射線でダメージを受けた細胞を排除する働きをする成分が含まれます
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結論
体内に入った放射性物質から身を守るためには、ビタミン類・ミネラル類・ファイトケミカル等の抗酸化物質がたくさん摂れる食事が推奨されます
化学合成農薬や化学合成肥料、合成食品添加物等の化学物質や脂質を多くを含むものを摂食すれば、その分解や排出にもエネルギーを分散する事になってしまいます。また、有機野菜と慣行栽培野菜とでは、含まれる栄養成分に有意な差があります
ですから、有機/オーガニックの米穀類・豆類・野菜・果物、より自然な海藻や乾物、伝統製法の発酵食品、良質な少量の動物性蛋白による伝統的な日本食が、放射性物質から身を守るために有効だと言えます
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参考
『放射性物質から身を守る食事法』ロマリンダクリニック院長 富永國比古著/河出書房新社
『体質と食物 健康への道』長崎の原爆被害から住民を守った医師 秋月辰一郎著/クリエー出版 |